22人が本棚に入れています
本棚に追加
木々から滴り落ちる雫が口元に落ち、澄んだ空気が運んでくる心地よい風が頬に問いかける。全てを白く染めてしまうかの様なその美しく眩い陽の光は世界全体に降り注ぎ、レイクピアに朝が来た事を告げた。
「ん…寝ちまっていたのか」
口元に落ちて来た雫をペロリと舐めながら上半身を大きく起こし、腕を大きく挙げ欠伸をしながら彼は言った。
まだ眠気と言う悪魔に襲われていたのも束の間、それ以上に厄介な眩い光のせいで完全に目が覚めてしまっていた。
眩しくない様にと眼を細め、右の掌を額に当てながら目覚めたばかりの青い空を見上げる。そして何かに気付きその状態のまま首の角度だけを変え遠くを見詰る。
この日は非常に空気が澄んでいたおかげか、普段は視界に捉えることの出来ない遥か彼方に大きく構える最果ての壁の山脈、そしてその後ろに神々しく光を放つ朝陽がはっきりと彼の目に映った。
「相変わらず綺麗な朝陽だ。…それよりも最果ての壁がこんなにもはっきり見えるなんて珍しいな」
異形の彼は余りの眩しさと美しさに目を背けそうになるのを何とか我慢をして、しばらくの間その景色を堪能した。
「昨日は鍛錬終えてそのまま寝ちまったから体中汚れてるな。今日は水浴びにでも行くか」
彼は右手に竹棒を持ち立ち上がる。そしていつの間にか足元に用意されていた食べ物を左手で掴み一口頬張った。
そしてゆっくりと口の端を上げた。
「いつも美味い食事をありがとうな、精霊さん」
食べ物を用意しておいてくれた「今は姿を見せていない精霊」に向けお礼の言葉を言い、左手に持っている食べ物を更に口に入れながら彼は湖へと向かい歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!