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彼も幼い頃はどんな視線が注がれようとも気にせずにいたのだが、ある時誰かが彼に向けていたずらで放った術を受けて大きな怪我を負った事があった。
それ以来彼は自分が周囲の人々にどれだけ忌み嫌われているのかを理解し、それならばと彼自身もまた人々に対し敵意剥き出しの態度を取る様になった。その為、天照す鏡が毎日人々で賑わう事を知っている彼はこの場所に来た時には周囲に威圧的な気を放ち威嚇をする様になった。
「…ッたく。相変わらずムカつくヤロー共だ」
天照す鏡を訪れる度に人々からあからさまに嫌な態度を取られるので本心では来たくはなかったのだが、彼が住む山の近くには水源がこの場所しか無い為か流石に天照す鏡に通う事を止めることは出来なかった。
そして彼はその威圧的な気で周りの人々を遠ざけ湖へと飛び込んだ。
レイクピアには人々、そして精霊以外にも生物とは言い難い謎の存在がある。
それは
レイクピアやそこに住む人々を見守る様に縦横無尽にと動き回る謎の古代兵器。その兵器には意思があるのか無いのか、そして何故この地にいるのかは知る由も無いのだがそれは人々を見ても決して危害を加えてくる事は無い。
ただただ動き回るだけの存在。それは一つ一つが大、中、小と様々な大きさでそれぞれが形も動く速さも異なっている。
湖から出た彼はろくに身体も拭かず、まだ乾ききってすらいない身体についた水分を地面に滴らせながら湖を後にする。
背後の彼方にそびえる山脈の上から顔を覗かせる太陽の、暖かく優しい恵で身体を暖め乾かしながら自身の領域である小高い山に向かい歩いていると左の方角から聞きなれた音がした。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
その音を出す者の正体はわかっていたのだが、つい反射で音がする方向に顔を向けてしまう。
今日も古代兵器がうるせえな。別に危害を加えてくることは無いからどうでも良いのだけれどな。ただ…コイツ等が近くを通ると耳が痛いんだよなぁ……。
今日の古代兵器は彼のすぐ近くを動いていたので音がとてもうるさく若干不機嫌になったのだが、それ以外には特に害は無いので顔を正面に向け直して自身の領域へと向かった。
しかし、この時彼は気付いていなかった。
いくつかの古代兵器が彼を視界に捉えた瞬間にその動きを緩め、彼に対し鋭い視線を向けていた事を。
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