第一章 憧れのお一人様生活

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家族の中でグランマは女帝だが、基本、家族のやることに口出ししない主義だ。 『己の行動は己の責任で行え。そして、どのような結果を招いても自己責任で対処すべし!』 グランマの口癖だ。放任主義にも思える言葉だが、個々を信頼しての言葉だと思う。なぜなら、対処できない事柄にはちゃんと知恵も手も貸してくれるからだ。 今回の兄のように。 「私もそう思う。兄さんって小さい頃からヒーロー好きだったもの」 「確かにな。メチャ好きだった。オニオンマン……」 遥か遠く幼い頃に思いを馳せるように兄が天井を見つめる。 オニオンマンというのは、野菜の国のヒーローだ。 子どたちに嫌われているにもかかわらず、玉葱の良さをアピールしつつ、悪という名の病原菌をばら撒く悪い科学者を懲らしめる、パターン化されたアニメの主人公なのだが……。 兄は中学目前まで本気でオニオンマンになると言っていた。それほどオニオンマンに陶酔していたのだ。 それが突然『医者になる』になった。おそらく幸之助さんの影響だろう。 父はオニオンマンより現実的な将来だと喜んだが、動機まで聞かなかった。聞いていたら二浪もさせなかっただろう。 「オニオンマンかぁ」 繰り返すように呟く兄に、「片付け終わった? お風呂入っちゃって」と母ののんびりとした声が届く。 父がうんうん頷きながら、「風子も早く寝なさい」と言う。 ああ、と思う。これから夫婦水入らず、イチャイチャタイムなんだと悟ったからだ。 本当……我が家は平和だ。
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