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「ええ、私も一緒よ」
グランマの隣に座る八重さんが、母にふんわり笑いかけた。
グランマが『柳』だとしたら、八重さんは『大福』みたいな人だ。内も外もコロンと丸く甘ったるい雰囲気を持っているのに、粘り強い。
「なら、心配いらないわね」
「聞き捨てならないね。真理亜、それはどういう意味だい?」
グランマと対等にやり合えるのは、この世に八重さんと母以外いないだろう。
八重さんも母もグランマとは違う意味で、普通人とかけ離れているからだ。
それに、八重さんは幼馴染だけあって、グランマの弱点は勿論、何から何まで知り尽くしている。まぁ、反対にグランマも同じだけ八重さんのことを知っているから、お互い無駄な争いはしないのだが――。
母は娘ということもあってか、グランマに対して遠慮のない物言いをする。でも、きっと何も考えていないのだと思う。だって、母の頭の中はいつだってお花畑だからだ。
堅物の父と万年夢子さんのような母が恋愛結婚だと知った時は、本当に驚いた。そんな二人は現在もラブラブだ。グランマでさえ立ち入れない。
「だって、一人暮らしなんてしたことないじゃない。できるの?」
「失礼な子だね。それに一人暮らしと言っても高級な介護施設のお試し生活だよ」
そう言ってカウンターテーブルの上に置かれたパンフレットの一文を指差した。そこには『終の住処は、エグゼクティブな介護付き高級マンションで!』と書かれていた。
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