私たちの日常

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いのは、精神的に相当辛いものがある。それでも必死に、次の行動こそ周りから浮くまいと、キョロキョロ目を彷徨わせていたその時。 「…い、お…や@#ち!あぁに…キョロ●△し…●ばれてえぇん…ろ!」  耳元で大声で叫ばれびくりと肩をすくませながら振り返ると、いつもの、『面倒くせえなあ』という上司の小杉の顔が眼前10cmに迫っていた。なんだろうと身構える縁に、小杉はそのままの表情で縁の肩を掴んで強引に立たせ、人差し指で縁の横を指した。見ると、にこやかな表情の式場スタッフが、こちらへおいでと手でジェスチャーしている。 (え?え?)  頭の中に疑問符と恐怖をいっぱいに浮かべながら、縁はやってきたスタッフに手を引かれ、先ほど花嫁の母親がスピーチしていた檀上に引きずられていった。 (しまった!)  頭の中に氷の棒を差し込まれたように、全身の体温が下がった。だがもう遅い。縁は何も分からないまま、スタッフに檀上で何か歌うように指名されてしまったのだ。壇上から小杉の顔を見つけ睨みつけるが、彼はにやにやした表情でこちらを一瞥した後、すぐに別の女性部下の方にとっておきの人受けのいい笑顔を-縁には1度もくれたことがない
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