私たちの日常

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奴だって」 「動画撮ったよ!今度LINEでみんなに回してやろ」  耳までかっと熱くなる。円は今すぐその無駄に伸ばした爪ごと、ふざけたデコを付けたスマホを手から引っ剥がして窓から投げ捨ててやろうかと思う。けれどそんなことをやったら確実に多勢に無勢、こちらの方が何百倍もの暴力を受けることは分かっているし、事なかれ主義の担任は、厄介者で『普通』ではない円の方を悪者扱いして、単位を盾にいじめのことを騒ぐなと脅してることも分かりきっている。 「おいおい、かわいそうだろ。あいつ障害あるんだぜ。だから音したら反応するのもしょうがないんだって~」  話している内容とは裏腹に、そう話す別の男子生徒の表情には明らかな侮蔑の色が浮かんでいる。そして『障害』という部分にたっぷりの嫌味と軽蔑を載せて発音している。 「そうだよね~、かわいそうな子だからバカの学校行かなきゃならないのに、なんでうちら健常者の学校来てるんだろうね~浮いちゃうの分かってんのにね~。あ、バカだから分かってなかったりして」  別の女子生徒が、それに同調して吐いた台詞に、円は今度こそ全身の血液が沸騰した。優秀な高校なら、いじめなどという馬鹿なこと
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