私たちの日常

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みんなも我慢してるんだし、障がい者だからって1人抜けると、みんなも迷惑ですからね」  迷惑。みんなも我慢してる。たった17年しか生きてないのに、何百回も何千回もたたきつけられた無理解で愚かな凶器の言葉を、円はまたぶつけられた。 「聴覚障害じゃなくて聴覚過敏です!何度言ったら分かるんですか!」 「なあ…」  左隣にいる父親側の耳珠を人差し指と中指でつぶし、同じように左目もつぶる表情になった円に気づいた父親ははっとして、もう部屋に帰りなさいと言ってくれた。円が台所の引き戸を閉めるか閉めないかで、また父親の抗議が再開する。 「…娘を受け入れると言っておきながら、娘の障害名すら覚えてないのが何より無関心の証拠じゃないんですか!あの子は普通じゃないんです。みんな我慢できることができれば、保護や手助けが必要な子だという診断書は下りませんよ!」  このマンションから今すぐ飛び降りれば、目に見えない自分の障害を理解しない人間たちと永久におさらばできるのだろうか。自分のせいで迷惑をかけ続ける父親の荷を下ろしてやれるのだろうか。何より、この生まれ損ないで、まともじゃなくて、そのせいで誰からも愛されない私からも
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