私たちの日常

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笑顔を、振りまいている。その他の上司も、すでに酔っぱらっているか、それとも本当は酔っていなくても、小杉に意見して自分の立場を揺るがしたくないのか、あるいは厄介者の縁が恥をかかされそうな場面に助け舟を出す必要がないと思っているのか、誰も助けてくれない。 (そんな…!)  今大地震でも起こって、結婚式どころじゃなくなってくれたらどんなにいいだろう。ついでに上司の頭の上に何か落ちてほしい。けれどそんな都合よく、縁の切なる願いを聞いてくれる神様はどこにもいなかった。 「…たってくださ…の、●■…!」  怒りと恥と絶望に押しつぶされそうな縁の横で、花畑でも広がりそうなスタッフの呑気な声が響いた。 * 「ゲホッゲホッ、クシャン!」  ガタン!いかにもわざとらしい咳払いとくしゃみの後に続いた。これまたわざとらしい、椅子の足が床にぶつけられる金属音。自分の意志とは関係なくびくりと体が揺れて、反射的に耳を手で塞いでしまう。思いきり睨みつけると、にやにや笑いの男子生徒と目が合う。そして彼はまた面白そうに周りの同級生とひそひそ話をするのである。 「きもいよね。いちいち音するたびに見てくるとか」 「絶対ヤバイ
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