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水の精が水の上を歩く姿は美しい。
その下に広がる波紋もまた、息をのむほど美しい。
目にした者は誰でも一瞬で水の精の虜になり、すぐに消えてしまった波紋を想い、嘆かずにはいられなくなるのだった。
水の精の虜になった娘がいた。
──自分もあのように歩きたい。
──あのように美しい波紋がほしい。
寝ても覚めても水の精と波紋のことが忘れられず、とうとう真似せずにはいられなくなった。
娘は歩いた。
水の精のように。
足元に波紋のような円ができるように。
だが、娘は大地の精だった。
衝撃の大きさゆえに地にあるものの多くが壊れ、たくさんの命が失われた。
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