となりの大家さん

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「ええええ!」 今回は、声が出てしまっていた。すると彼は振り返って、再びサングラスをずらして私を見た。 「…何スか?」 「え、あなた、大家さん…?」 「そうっスけど」 「げ、芸能人だよね…?」 「はあ、まあ、一応」 一応って。あんな有名なファッション誌の表紙を飾っておいて、一応って! 「…てか、昨日、気付いてなかったんスか?」 そりゃあ、気付く訳がない。草臥れたスウェットを着て、ボサボサの髪で迎えられても。しかも、私は今日、あなたの事を知ったんだから。 「あ、分かってると思いますけど、絶対誰にも言わないで下さいね。引っ越すのダルいんで」 「と、当然です…」 じゃあ、と彼は素っ気なく部屋に入ってしまった。 まさか、引っ越し先の隣の部屋に芸能人が住んでいるなんて。少女漫画じゃないんだから。 そりゃあ、このフロア全部の部屋、買えるよね。なんて下世話な事を考えるまで、少し時間がかかった。それくらい、私の頭はパニックだった。 部屋に入って契約書を確認すると、契約名が「常盤(ときわ) (れい)」になっていた。そりゃ、麗音なんてキラキラネーム、本名な訳ないか。納得すると、またその契約書を大切にしまった。
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