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「お疲れ様でした。今日もありがとうございました」
「一ノ瀬さん、お疲れ様でした!」
ニッコリと笑顔で彼女を見送る。と、彼女が駆け足で戻って来て、私に耳打ちした。
「あの、実は、言うか迷ったんですけど」
ーーーテラスに座ってる人達、開店した時から居るんです。
そう言われてテラスに目をやると、20代くらいの男女3人組が、何やら書類をテーブルに広げているのが見えた。コーヒーカップは3つとも空になっていたが、そんな事も御構い無しに神妙な面持ちで話し合いをしている。
開店からということは、かれこれもう5時間ほどは居座っていることになる。
「そんなに混んで無いし、大丈夫ですよ」
「でも、写真撮ったりしてるんです」
「写真?」
「そうなんです。内装とか、ショーケースとか」
ーーー絶対、スパイです!
大真面目な、その顔。一体幾つなんだこの人は、と吹き出してしまった。
「スパイして貰えるような店になれて良かったです、ご心配ありがとうございます。注意して見てますね」
そう返すと、彼女は満足そうに微笑んで、帰っていった。
結局スパイ達は、追加でケーキセットを頼むと、15時過ぎまで話し合いをしていた。
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