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その言葉にひるみ、一瞬手を緩める。
彼女はその隙にドアを勢いよく開け、一目散に逃げ出した。
俺は足がもつれそうになりながらも、必死に追いかける。
彼女はエスカレーターを駆け下り、病院の玄関をスルリと抜ける。
俺も走るが、軽い身のこなしの彼女とは違うため、何度も人にぶつかりそうになる。
濡れたアスファルトを蹴り、駅舎に辿りついた泉さんは、
鞄についた定期券を機械にかざし、そのまま改札を抜けた。
俺もポケットからスイカを取り出す。焦っているからか、どうしてももたつく。
そうこうしている間に、例のアナウンスが響く。
「――間もなく、電車が参ります」
俺はようやく掴んだスイカ片手にホームへの階段を駆け上る。
彼女の後姿を捉えた時、すでに電車のドアは開いていた。
列の最後尾に並ぶ彼女が足を踏み出した、その時。
「須藤!泉さん!」
俺の全力の呼びかけに、泉さんがふと、振り向く。
俺は思い切り息を吸い込み、叫ぶ。
「好きだぁぁー!!」
思わず出た、その言葉。
彼女が目を見開き、一瞬足を止める。
その瞬間に、列車のドアが、ゆっくりと閉まった。
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