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目が覚めるとそこには、宝石を散りばめた空があった。
その表現はけして比喩なんかではなく、本当に砕かれて小さくなった宝石が浮かぶ空が目の前にあったのだ。
どうやら私は地面に仰向けで倒れているらしい。幻想的な空を見つめつつ、私はゆっくりと体を起こす。何故だか、体が羽のように軽かった。
体を起こすと、一面の夜空が視界に飛び込んでくる。上下左右、何処を見回してもまるで絵画のような星空が広がっていた。星や宝石の欠片が闇の中でその存在を主張するように煌めき、ぽっかりと浮かぶ異常なまでに大きな月は、青白い光を放っている。
それら全てが、私が今座り込んでいる地面に反射して世界をもう一つ生み出している。所謂、鏡面湖だ。私は鏡のような地面にいつの間にか倒れていたのだ。ここに来るまでの記憶は一切ない。夢でも見ているのだろうと頬をつねってみるが、ヒリヒリとした痛みは確かにあった。
不思議さと少しの不安に駆られた私は、辺りをキョロキョロと見回した。変わり映えしない景色に段々と恐怖すら湧き上がってくる。見えるものは随分と神秘的なのに、こうも不安になるのは何故だろう。
とにかく誰か居ないものかと、私は必死に人を探した。底の見えない穴を覗き込んでいるかのような気分だ。そのせいで、足には全くと言っていいほど力が入らない。ただその場に力なく座り込んで、私は星空の世界を見つめるしかなかった。
しかしその時、視界に人の足が映りこんだ。ピカピカに磨かれた革靴と、スラっとしていそうな足を包む黒のパンツ。視線をゆっくりと上にあげていけば、白いウィングカラーシャツに、黒のベスト。その格好は、まるでレストランのウェイターだ。
それらを纏うのは、少し癖のあるナチュラルショートヘアの青年だ。金色の髪が、夜空の黒によく映えている。青年はニコリと柔らかく笑うと声をかけてきた。
「お目覚めですか?」
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