シト編

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-前回までのあらすじ- 〈add.0(エイド・ゼロ)〉を使いこなすため、自身の心の虚と戦うスズリ、ナタリア、コトハ。『母親を傷つけた過去』を乗り越え〈 add.0(エイド・ゼロ)〉を完成させたスズリに対し、ナタリアとコトハはまだ出来ない。ゼロ化出来ないユウキも、〈制御解除(リミットブレイク)〉を目指すが未だ至らなかった。そんな中、刻一刻と、レベル5〈忿怒(ラース)〉の進行の日が近づく。 ▽ 灰色の空。灰色の世界。荒廃した都市。積み上がる死骸。 大量のキャンサーに囲まれて、その少女は地に伏していた。 これは過去の話。少女、コトハがまだキャンサーになって数ヶ月のある日。 距離を詰めてくるキャンサーに、成す術はない。 「死に、たく、ない......!死にたく、ないよ......!」 無線の向こうから名古屋支部の司令が叫ぶが、彼女にはもう聞こえてなかった。 泣きながら、ただ「死にたくない」と繰り返すコトハを、一体のキャンサーがつまみ上げた。 「ひぅ」と喉を鳴らした彼女は、ゆっくりとキャンサーの口へと運ばれて行く。 嗚呼。大きく開かれたその口が閉じられた時、彼女は呆気なく死ぬのだろう。 だが、そんな時は来ない。 キャンサーの腕を、何かが斬り裂いた。 同時、重力に任せて地面に落下するコトハを誰がが受け止めた。 「アンタ、大丈夫か?」 腕を裂いたのは深紅の槍。 彼女を抱いたのは深紅の髪の少女。 「だ、れ......?」 朦朧とした意識で、ぼやけた視界で、コトハは少女の顔を見た。 優しく微笑んでいた少女は、その特徴的なギザ歯を見せて大きい笑みに変える。 「待っとき。あいつら全員倒して来たるさかいな」 少女はゆっくりとコトハを地に降ろす。 そうしてキャンサーの大群へと、一人で歩いて行った。 地に刺さった槍を抜き、敵陣を駆ける彼女の姿は、 「きれい......」 ▽ 現在。 訓練室に、気合いの入った叫びが響く。 「はぁぁぁぁっっっ!!」 誰も遊ばない偽物の公園の中、 炎を纏ってオレは叫ぶ。 もっと火力を。もっと火力をと身体の熱を上げていく。 遺言霊を使うオレに、ゼロは使えないらしかった。しかし代わりになるものはある。
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