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本当なら直接渡して、昨日のお礼ももう一度ちゃんと言いたかったんだけど。
もしかしたら昨日はたまたま大丈夫だっただけで、今日はいつもの男性恐怖症がまた出るかもしれない。
もしそうなったら、イヤだし。
逆に会えなくて正解かも。
なんて考えていると、管理人のおじいさんが私に気づいて小窓から顔を出していた。
「お嬢さん。どうかしたかい?」
私は顔を出している管理人さんの近くに行った。
と言っても、2メートルは離れてるけど。
「あの、お財布を拾って…。免許証を見たらここの住所が書いてあったので届けに来たんですけど……」
財布を渡す。
管理人さんは財布を受け取ると、免許証を出して顔と名前を確認する。
「あぁ、白金さんね。今出かけとるんで私が返しておきますよ」
「ありがとうございます。お願いします」
お礼を言って帰ろうとしたその時。
「噂をすれば帰って来た。おーい白金さーん、お財布届いてますよー」
管理人さんの言葉に後ろを振り向くと、そこには昨日私を酔っ払いから助けてくれた白金さんが立っていた。
白金さんはこちらに近づいて来ると、管理人さんから財布を受け取った。
そして私に気づくと、少し驚いた顔をした。
「お前、どうして」
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