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春と言ってもまだ日は短いし、夜は肌寒い。
そんなに早く帰りたくはないけど、かと言って不審者に遭遇したくはない。
私は仕方なく歩く速度を速めた。
すると、前から三十代位の男の人達が三人大きな声で話しながら歩いてきた。
不審者ではなさそうだけど、近づかない方がいいかも。
私は、念のため早歩きのスピードを緩めず、その人たちの横を通り過ぎようとした、その時、
「あれぇ?君可愛いねぇ、そんなに急いでどうしたのぉ?」
三人の中の一人が私に気づいて腕を掴んできた。
「は、離してください!」
私は腕を振り払おうとしたけど、無理だった。
恐怖で力が出ない。
私は男の人がだめなんだ、いわゆる男性恐怖症ってやつ。
私は今更ながら、一人で帰るって言ったことを後悔した。
「は、離してください! だって、か~わい~い」
男の人からはお酒の匂いがする。酔っ払ってるみたい。
「ね~、俺達これからコイツんちで飲み直すんだけど、君も来ない~?」
私は必死で首を横に振った。
すると後ろで見ていた二人のうちの一人が、割って入って来た。
「おい、お前怖がられてんじゃん。女の子には優しくしないと」
助かった。と思った私の肩を男の人が掴んで来て、
「ごめんね? コイツが怖がらせて、お詫びに……」
割って入って来た男の人は、私の肩をガッチリ掴んだまま顔を近付けて来た。
き、キスされる!
私は抵抗する事も出来ずに、ぎゅっと目をつぶった。
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