水川君

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「好きな人いないの?」という話を振ってから、なんだか美月は口数が減ってしまった。 チラチラ横顔を盗み見るけど落ち込んでいるような、怒っているような、そんな風に私には見えた。 あの話題そんなに嫌だったのかな。 今度から気を付けないと。 珍しく会話も無いまま学校に向かう。 そしてそのまま下駄箱に到着して上履きに履き替える。 するとさっきまで黙っていた美月が、 「奈心、見て」 そう言って私の後ろを見ていた。 言われた方を振り返ると一瞬ドキッとした。 そこにいたのは、沢山の女子達に囲まれ押され気味の白金先生だった。 私は動揺したことを美月に悟られないように冷静になれと心の中で唱える。 「白金先生がどうしたの?」 私の動揺に気付く様子もなく、美月は言った。 「あの女子の群れの中に恋歌がいるのよ」 群れって……、ハイエナみたい。 でも、ある意味そうだよね。 私も女子達に目を向けてみると、確かにその中に恋歌の姿が見えた。 だから今日は通学路で会わなかったのか。 わざわざ先生に会うために一人だけ早く来るなんて。 それにしても白金先生って、ホントにモテるんだなぁ。 先生は皆が先生の事を好きなのを憧れなんて言ってたけど、あの中には本当に先生を好きな子もいるはずだよね。
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