水川君

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「あ、そうなんだ……」 はぁ、今日は昼無しか。 そのまま教室に戻りたかったけど、せっかく教えてくれたのにそれは失礼なので。 「えっと、教えてくれてありがとう」 とだけ言って、下りていた階段を引き返して教室に戻ろうとする。 階段を上りきったところで下から、 「黒須」 と呼ばれた。 もちろん水川君に。 ちょっとビクっとしたけど、そっと振り返る。 と、目の前に何かが飛んできた。 思わずキャッチして、手の中に収まった物を見ると。 それはメロンパンだった。 購買に行ったら私が買おうとしていた物。 しかもこのメロンパンは購買で1番人気で1人1個という個数制限まであるのだ。 「あの、これ」 私がメロンパンを持ったまま固まっていると、水川君が言った。 「それ、食っていいよ。俺別のも買ったから」 「っでも」 「だって昼買いに行こうとしてたんだろ?購買もうなんも無いし、俺の事は気にしなくていいから」 「ありがとう……、あ、じゃあお金……」
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