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「ほら、入れー」
数学準備室の前まで来ると、ドアを開けて白金先生は中に入って行く。
私も先生の後に続く。
「は、はい。……お邪魔します」
「その辺の椅子、適当に座っていいぞ」
そう言って先生は自分の定位置なのだろう、先生用の机の前の椅子に腰掛けた。
私もその辺にあった椅子に座る。
「で、相談というのが……。……はっ!」
先生は窓に背を向けているから見えてないけど、私の座っている場所からは、中庭を挟んで自分の教室が見える。
しかもまだ教室に美月と恋歌が残ってる。
こっちには気付かないと思うけど先生と二人だし、もし気付かれたら……。
用事があるからって言って別れたのに見られたらまずい気がする。
「どうした?黒須」
「あの……。カーテン閉めてもいいですか?」
「ああ、いいけど。どうした」
「私美月と恋歌に用事があるからってさっき別れたんです。それでここにいるの見られたら、色々聞かれそうな気がして」
「なるほど」
先生は私の説明に納得したのか、立ち上がってカーテンを閉め、電気を付けた。
「ありがとうございます」
座り直した先生はジッと私の方を見て、
「で、何か相談があるんだよな」
「あ、はい。水川君のことなんですけど……」
「ああ、そのことか。いつの間に水川と仲良くなったんだ?」
「えっ、仲良くなんてなってないですよ!」
私は顔の前で手をぶんぶん振って否定する。
「でもさ、昼休みパン貰ってたよな?」
見られてたのか……。
「あ、あれは私が今日お弁当を忘れちゃって……。購買が売り切れたって水川君が教えてくれたんです。それで私の昼ごはんが無いって知った水川君が自分のパンをくれたんですよ。それだけです!」
私が勢いよく言うと、
「っ……ククっ、なんでそんなに必死になってんだよ?」
先生は涙目になって笑っていた。
な、何がおかしいのよー!!
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