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昇降口で上履きに履き替えた私たちは、教室に向かうため職員室横の階段を上って行く。
すると上から友達と3人で階段を下りてくる水川君と遭遇。
私は気付いたけどそっちに顔を向けないように階段を上って行く。
気付かないでー!という私の心の声も虚しく……。
「あ、黒須。おはよう」
水川君が、相変わらずの爽やか笑顔で挨拶してきた。
私はというと。
「お、はよ、う……」
緊張でちゃんと挨拶出来なかった。
すると横にいる美月が、
「ねえ、水川。奈心が話があるらしいんだけど」
それだけ言うと、美月は素知らぬ顔で階段を上り行ってしまった。
水川君は友達2人に「先に行ってて」と言い、私と一定の距離を保ったままその場に残った。
話すには不自然な距離。
きっと中学の時の事を覚えててくれてるからだと思う。
「黒須、俺に話って?」
「え、と。あの、その……」
どうしようやっぱり怖い。
「黒須?」
聞こえてくる水川君の声は、心配してくれているように聞こえる。
でも、声が出ない。
その時。
「昨日メロンパンのお返しがしたかったんじゃないのか?」
意外な事に私の後ろから、別の声が聞こえてきた。
「白金先生……」
水川君が声の主の名前を呟く。
そう、私の後ろにいたのは白金先生だった。
「え……、な、なんでっ」
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