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そっと、優しく頭を撫でてくれたのは誰だっただろう。
愛情に溢れた手、だった。その人の手が、その人の笑顔が僕はとても好きだった。
『うん、そうそう。…素敵な笑顔!』
彼女はにっこり笑って、僕にそう言った。言葉にしなくても、大好き、というのがめいいっぱい伝わってくる。出来ることならずっと彼女と一緒に生きていきたいとそう思っていた。――それはけして、叶わぬ願いではあったけれど。
僕達は出会った時から、さよならする時が決まっていたから。僕はそれを、痛いほどよくわかっていたから。
『お願いね、ジャック。ずっとずっと…誰かの側で、そうやって笑っていてね。それが私の、私たちの願いなんだから』
僕が笑顔でいたら、貴女もきっと笑ってくれるよね。
だったらずっと笑顔でいるよ。貴女のために、幸せになるからね。
僕は心の中でそう誓いを立てたのだった。だから――想像もしていなかったのである。こんな時が来るなんて――こんな酷いことになるだなんて。
『きゃはははっ!ジャックーあそぼー?今日はねえ、友達をたくさん連れてきたのー。みんなあんたで遊びたいんだってぇー』
ああ、やめて。痛い――痛いよ。
僕の悲鳴は届かない。
泣いても叫んでも――けして地獄は、終わらない。
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