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目覚まし時計の音で目が覚めた。夢から覚めてもユミカの声、ユミカの温もりは鮮明に思い出すことができた。僕が感じた胸の痛みさえも。
自分の特技を自覚して以来、夢の中で思いどおりにならなかったのは、憶えている限り今回が初めてだった。ユミカは生身の人間と同じように、僕の意志などお構いなしに振る舞った。それでも、いつもの朝とは違う充実感があった。
もしもユミカと付き合うことができたら、こんな風に――。
いや、それは過ぎた願いというものだ。石ころは石ころらしく、雨風をじっと堪え忍び、星を見て思いを巡らせていれば良い。そうすれば、誰も傷つくことはないのだから。
「おはよう」
教室に入って席に着くなり、元気よく声をかけられた。右手にはユミカ、ではなく、山城が立っていた。
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