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僕の名は川相豪介というのだが、ひょろひょろとして頼りなく、無口で人付き合いが苦手な自分には過ぎた名前だと思っている。学校での評判も自己評価と概ね変わらないようで、影が薄い僕はゴーストというあだ名で呼ばれていた。「ごうすけ」という音にかけたのだろう。それがコードネームであればそれなりに格好良いのだが、どちらかと言えば馬鹿にしたネーミングに違いなかった。
その名が示すとおり、僕は誰とも話をせず、時には気づかれることすらなく、さながら幽霊のように高校に通った。今年二年生になったが、大した変化もない。
とはいえ、面と向かっていじめられるようなこともなく、基本的には放っておかれるだけだった。必要があれば口を利いたし、無視もされない。要するに、誰も僕に必要以上に干渉することはなく、僕もまた彼らに対してそうした。僕にしてみれば、それは理想的な関係だった。
そういうわけで、横に立つ山城とも良好な関係を築いているとは言えなかったが、仲が悪いわけでもなかった。要するにただのクラスメイトだ。
やがて電車が駆け抜け、山城の髪がふわりと舞った。遮断機が上がると、彼女は「じゃあね」と言って先に歩き出した。珍しいこともあるものだ。僕も「じゃあ」と返事をした。彼女は小走りに踏切を越え、向こうの角を右に曲がった。
よし、と胸の中で呟いて、僕は今日の「パートナー」を山城に決めた。
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