1人が本棚に入れています
本棚に追加
火曜日(4)
ユミカがもう一度溜息をついた後、僕は尋ねる。
「お父さんやお母さんを説得できないの?」
「……うちのお父さんは明治時代からやって来たような性格で、子供は親の言いなり、女は家庭に入って男に尽くすのが当たり前だって考えてるの。お母さんはお父さんに逆らえないし。だからね、高校を出たら家を出て、アルバイトしながらお金を貯めて、それで写真の勉強するために学校に通おうかと思ってる」
なるほど、と僕は相づちを打った。先程の様子を見ていれば本気なのだとわかる。
「そのことでさっき喧嘩してきたんだ。まあ、いつものことなんだけどね」
ユミカは泣いてこそいなかったが、幾分しょげてしまったのが声色から感じられた。寄り添ってあげたいと思ったが、柄でもないし、僕たちの体は離れすぎていたし、なにより、僕は彼女の恋人でも何でもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!