1人が本棚に入れています
本棚に追加
地味で根暗でガリガリでオタクで人付き合いが下手で――自分を卑下する分にはきりがないが、そんな僕にも一つだけ特技があった。夢をコントロールすることができるのだ。夢の中では好きなように行動でき、思うがままに世界を操れる。ネットで調べたところ、どうやら明晰夢と呼ばれるものらしい。
夢の中に限れば、僕は主役にも神にもなることができた。もちろん現実には何の影響も及ぼさないし、金になる能力でもなかったが、夢の中で自由に振る舞うのは僕の生き甲斐と言っても過言ではなかった。
自分の能力に気づいたのは小学五年生の冬休みで、初めは空を飛んだり、海に潜ったりするくらいだった。年齢を重ねるごとに夢のバリエーションは広がり、やがてアイドルや学校の美少女と愛し合うことがメインになった。
夢の中では誰もが僕に好意的で、親切だった。全てが僕の思い通りになった。夢から覚めるまでの間は。
その夢の世界で今夜のパートナーに選んだのが山城というわけだ。現実の彼女には何の影響もないのだから、僕が良い思いをしても迷惑はかからない。
僕はすでに興奮していたが、寝る前に一度出しておけばパンツを汚すようなことはなかった。今日も備えは万全だ。
最初のコメントを投稿しよう!