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月曜日(3)
僕の意識は夢の中に移動していた。どこまでも青空が広がり、足下は見渡す限り芝生に覆われている。右手側にはテレビCMで見たような大樹がそびえ立ち、その根元に高校の制服を着た美少女が立っていた。山城だ。僕はそちらへ歩み寄って、彼女に声をかける。
「やあ」
山城は訝しげな顔をした。……おかしいな。彼女はにっこりと笑う――予定ではそうなっているはずだ。思いがけぬ反応にまごまごしていると、彼女は台本にない台詞を喋った。
「川相君? ここはどこなの?」
「あ……ああ、僕の夢の中」
答えながら、僕は困惑していた。山城を制御できない。今日は調子が悪いのだろうか。
「川相君の夢の中? それはまた、妙なところにお邪魔しちゃったな……」
山城は困ったように頭をぽりぽりとかいた。そして、横目でこちらを見ながら、
「その、よかったら、着替えてくれば?」
と言った。彼女の視線は僕の下半身に向けられていた。僕はTシャツにボクサーブリーフという寝間着そのままの格好だった。多感な女子高生と向き合うには相応しくない。
恥ずかしくなってすぐに着替える。とっさのことだったので、山城に合わせて高校の制服に変更した。服装だって、念じるだけですぐに変えることができるのだ。それが山城の目には手品のように見えたのだろう、すごいすごいと喜んでいる。
僕は試しに風を吹かせ、雪を少し降らせてみた。それらは当たり前のように操作できたが、やはり山城だけは思い通りに動いてくれない。
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