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月曜日(4)
近代的な街並みが見えてきて、僕たちが通う高校を通り過ぎ、ファミレスの前に絨毯を降ろした。僕はほとんど外で遊ばなかったので、都市部の風景といえば家から学校までの間と、最寄りの駅周辺くらいしか思いつかなかった。絨毯から降りたユミカは落胆の色を隠さずに言う。
「空飛ぶ絨毯でファミレスに連れてきてもらえるなんて、夢にも思わなかったわ」
次に女の子をエスコートするときは、もっとお洒落なカフェか何かにしなさい。ユミカはそう付け加えて僕を指導した。そんなことを言われても、僕はお洒落なカフェになど入ったことがないので、その内部や雰囲気を想像できない。
気を取り直して店に入り、ウェイトレスに案内してもらう。僕たちの他にも客はまばらに入っていた。通されたのは、小綺麗なテーブルと固そうなソファが等間隔に並んだ一般的なファミレスの座席だった。席に着いてドリンクバーを二つ注文すると、ユミカが不思議そうに尋ねる。
「さっきみたいに、ぱっと飲み物も出せるんじゃないの?」
「できるのはできるけど、せっかくだからドリンクバーを注文して、何飲む? 持ってきてあげようか? っていうのをやってみたかったんだ」
「ふうん。夢の中だからって、調子に乗りすぎじゃないの」
ユミカは呆れたような顔をしながらも、まあいいわ、私が持ってきてあげる、と席を立った。程なくして彼女は、僕が頼んだオレンジジュースと、自分のアップルティーを運んできた。
「ありがとう」
「これは空飛ぶ絨毯のお返しだから。勘違いしないでよね」
そう言って意地悪な顔をするユミカは魅力的で、僕は思わず、心を奪われそうになった。
これほど長い時間他人と話すのは随分と久しぶりだった。案外、悪くない。自分の意図したとおりになるのはもちろん面白いのだが、夢とはいえ、こうやって自我を持った人間とふれあうのも充実感があった。もっとも、それが本来のコミュニケーションであり、自然な喜びであり、僕が今まで手に入れられなかった、避けてきた類のものなのだろう。
ただ、こんなことができるのも夢の中に限った話だ。現実世界ではこんな風に明るく振る舞えないし、面と向かって女の子と話す度胸もない。ユミカとだって、実際には――。
どうしてだろう、悔しい気持ちがこみ上げてくる。誰かと仲良くなること、特に女の子と親しくなることなど、とうの昔に諦めてしまったはずなのに。
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