△4三石将(せきしょう)

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 沖島(オキシマ)は例会も勿論だが、竜王戦でも勝ち進んでいるため、日々、将棋漬けの日々、らしい。あれから完全に避けられるようになった僕には、その動向は伝聞でしか知りえないものの、本業が順調で何よりだ、と思う。  波浪田(ハロダ) 右近(ウコン)先輩も、ああ見えてプロであるわけで、なかなかここには姿は見せない。それよりも出席日数の方が危ないらしく、大量の補習をこなしつつ、何とか三度目の高三からの卒業を目指しているとのことだ。  僕は意外に、ここでの諸々に体が慣れてきているような気がする。体は。  連日の「訓練」。それは正義のヒーローとしてはまっとうなことこの上ないと思うのだけれど、何というか、ベクトルの向け方が異なっているような、そもそもベクトルをどちらに向ければいいか分かっていないような、そんな納得できない感を常に僕は抱え込んでいるわけで。まあ、どの道、体を鍛え上げることの出来るまたとないチャンスだ。こちらもいろいろと活用させてもらうこととしよう。  「出動」が掛かれば、もちろん現場に急行する。しかしこの頃では本当に「イド」の出現が多くなっている。数十分おきくらいの時間帯もあったりで、出来うる限りの少人数で、各事案に対応しているといった具合だ。敵の最下等、「ホリゴマンダー」相手なら、ひとりで向かわされることもある。  そんな、忙しくも充実した(と言えなくもない)毎日が続いていくのだと思っていた。しかし、とある一報から、徐々に世界は変容の時を迎えるのであった。
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