△4五嗔猪(しんちょ)

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<イド出現まで……あと『29分』>  オペレーターさんの緊張を押し殺したような声が響いてくるが。その真剣な声色に却って不安感を煽られてしまうわけで。「開戦」まであとわずか30分弱。僕らが出来ることは何だ? 「……全員で向かいましょう。その後の事は、その後考える」  沖島(オキシマ)の冷静を保った声は、当然の一着は一着であったものの、僕らに動くきっかけと勇気を与えてくれた気がした。6人がほぼ同時に席を立つと、入り口に近い順に、次々と会議室を後にしていく。  そうだ、逡巡している場合じゃあない。相手の得体の知れなさ、それは不気味であるものの、未知のものを恐れていてどうする。僕らはヒーローだ。曲がりなりにもヒーローたるものなのだから。  ぐっと一回奥歯を噛み締めてから、出遅れた分を取り戻そうと全筋力を前への推進力へと変えていく。
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