▲4六猫刄(みょうじん)

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 決意を込めて出動したものの、新宿の駅周辺の様相は、僕らが想像していた以上に変貌を遂げていた。  新宿駅南口付近。「イド」の噴出まで残り2分と告げられていたのにも関わらず、二次元人が、確かにそこに存在していたのだった。 「『イド』から……直結している!?」  走る前方のミロカさんから、そんな驚愕の声が漏れ出て来る。前方やや上を見やると、天を衝くミライナタワーのどてっぱらに、亀裂のような黒い巨大な爪痕のような「裂け目」が確かに見て取れた。それは建物に付けられた痕跡ではなく、そこの空間が裂けているように、確かに見える。 「な……」  驚きの余りそれ以上の言葉を発せなくなってしまう僕の左後方のナヤさんだったが、僕なんかはもうぽっかり口のまま、一言も発することなんて出来なくなっている。さらに驚愕を助長するかのように、その「裂け目」から二次元人がぐいいとこちら側に這いずり出てきたわけで。  見慣れたヤツだ。黒い、「ホリゴマ」。しかし上空で蠢いているその図体の大きさが、先ほど懸念したように今までと異なっている。目視だが、約五まわりくらいの大きさはある。  「歩兵」と水無瀬書体でそのボディに彫られているが、その「歩」一字だけで既に僕らの身長くらいの大きさはあるんじゃないか? 細い「裂け目」を鉄骨を組み合わせたかのような両腕を使ってずりずりと這い出してくる様は、今までの中で最大級の現実感の無さだ。  その場に居合わせた人達は、一様に驚きは見せているものの、スマホを向けている輩も結構いて、いや、まずいって。
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