△4七猛牛(もうぎゅう)

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 しかし「全員揃いぶみ変身」の高揚感やら余韻を噛み締めているヒマは全く無い。カラフルなスーツに身を包まれた我々6人は、撮影かっ? と、この危険な状況にも関わらずスマホを向けて来る周囲の人々の視線を置き去りに、20号を駆け抜ける。  シャバでの戦闘は初めてだが、躊躇している暇も無い。とにかく今やることは、頭上の「次元の裂け目」的なところから、その見慣れないバカでかい図体で這いずり出て来ようとしている二次元人「歩兵」を、殲滅、あるいは元いた異次元空間に押し戻すことだけだ。 「……」  と、既に射程に入ったのだろうか、先頭を黒い翼をはためかせ疾駆していたミロカさん……「スカーレット鳳凰」が、その腰の得物を両手それぞれで抜き放ちざま、一旦、空高くへ掲げるように挙げると、一拍の時間差を置いて、左、右、左、右と、オートマチックとリボルバーを交互に投げ撃ちのような要領で射撃を開始していく。 「!!」  その放たれた弾丸は、16ビートを刻むかのように、巨大な「歩兵」の黒いボディに叩き込まれ、その動きをくい止めている。息をつかせぬ連射。走りながら。流石としか言えない。 「いくで新人くんっ、うちに続けーやでぇ」  その出来た隙を狙うかのように、「グリーン反車(へんしゃ)」こと、双球戦士フウカさんは、もともとのかなりの前傾姿勢から、さらに大地を四足疾走するくらいの角度に上体を倒したまま、ぐんと加速する。その口調はいつも通りの力の抜けた自然体な声色であって、僕はその事に少し安堵と余裕を取り戻す。そして突き放されないように必死で脚を繰り出していく。
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