△4九車兵(しゃへい)

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「『何なんかわからんけど反車(へんしゃ)』ぁぁぁぁぁぁっ!! あわよくば成ってぇぇぇぇぇぇっ!!」  やはり、フウカさん(グリーン反車)の突進力には敵わない。「枡目」は混沌としているのでその座標は正確には判別できないが、そんな事は物ともせずに、力強い踏み込みで、敵の最前線へと一気に距離を詰めていく。 「と金ッ!! いま一度左から回り込む一手だろうがッ!!」  光弾の連射を続けているミロカさん(スカーレット鳳凰)も、興が乗ってこられたようで。腹から出されたその命令なんだか叱責なんだかに背を押され、僕(レッド獅子)も敵陣への疾駆を開始する。 「だろうがァァァァァッ!!」  おっと、被せるようにして、既に戦闘モード(と言うか罵倒モード)のナヤさん(イエロー猛豹)の素っ頓狂怒声も背後から聞こえてくる。一瞬、バランスを崩しかけた僕だったが、それをもフェイントとしてかまして、一拍の時間差を置いて、敵集団の斜め左から飛び掛かっていった。 「『獅牙肘(シガスン)』っ!!」  我がネーミングセンスは今日も冴え渡っている。大きく後ろに振りかぶった左肘を、前方へ投げつけるように、右側に払い抜けるように薙ぎ払う。未知なる大将棋パワーにより強化された上腕筋が唸りを上げ、上腕骨を獲物を喰らい屠る「獅子の牙」へと変貌させる。薙ぎ払った反動でそのまま自分の身体も半回転するままに流しつつ、左肘は背後へ引き絞って「当て」の時間および距離を稼いで、敵陣の前面を払い抜けた。  すなわち横一閃。  回避不能の一撃に、敵の陣営は大きく揺らぐ。最前にいた「歩」だか「銀」だか「桂」だかのこめかみ辺り(推測)を、まとめて「牙」が粉砕していった。黒いボディの全面にも亀裂が走り、次の瞬間、横並びの7~8体がとこが一斉に爆散する。
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