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「だが……もう突入するだけの力が無い」
ミロカさんは冷静だ。冷静に、この「作戦」が机上のものであることを指摘してきてくれる。でも、それ以外に手は無いはず。ならば……
「僕が行きます」
自然とそう口をついて出ていた。そう、非常に分の悪い賭けだが、勝算がゼロではない「方法」が僕にはある。
「あんただって限界でしょ!? ……中途半端に突っ込んでも犬死にしかならない」
ミロカさんは一瞬、感情を滲ませつつも、やはり冷静な指摘だ。だが……
「……」
「!!……ちょっと、モリくん!?」
沖島が悲鳴のような声を上げたのは、僕が自発的に「変身」を解いたからだ。この局面での解除……自殺行為に見えたかも知れない。あるいは、そうなのかも知れないが。微かな光と共に、僕の全身を覆っていたスーツは、丹田辺りに位置していた五角形の黒い「ダイショウギ×チェンジャー」へと収納されていった。
「大丈夫。今こそ……我が封印されし力を解放する時……」
改造学ラン姿に戻った僕は、おもむろにその上着を脱ぎ捨てる。ドシャ、みたいな鈍い音を立てて、その15kgの重さを誇るオーダーメイドが、盤上に落とされた。続いて両手首の10kgずつのリストバンドもその上に投げ落とす。
赤のタンクトップを上から締め付けるようにして、バネの集合体……「大棋士養成ギプス」が上半身を覆っていたが、これも外す。重力が、半分以下になったような感覚。いける。
「……中途半端には突っ込まない。玉は最奥。ならばそこまで身一つで駆け抜けるだけ」
決まった。僕の果敢かつ勇猛な決意の言葉に、傍らの四女子が貫かれた(ように感じた)。
だがしかし。
<おおーい、待つのだ鵜飼くぅぅん、そんなのよりも、もっとうまい手があるぞよぉぉ……ぞよぉぉ……ぞよぉぉ>
いきなり間の抜けた声が、無駄なエコーを伴って響いた。僕の「チェンジャー」からだ。博士……これそんな通信機能みたいなのあったっけ? 初めて知った。いやそれよりも「そんなの」とは何だ!!
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