△1四銀

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「『二次元人』がその進化の過程で切り捨ててきたもの、それを利用して、私が作り上げた『武装兵器』、それこそが『ダイショウギ×チェンジャー』」  大事なことだから二回言ったのだと思う。そしてただの将棋では無く、おそらく「ダイ」というところがミソと見た。「大将棋」……聞いたことはある。 「物は試し。それを翳して、叫ぶのだ、魂の命ずるままに! さすれば為る。『二次元人』の堅牢な外殻を身に纏った、そして、失われし『大将棋パワー』を心に秘めた、最強の将棋戦士、『ダイショウギレンジャー』へと!!」  老人のテンションはマックスへと振り切れたようだ。白髪を振り乱し、天を仰ぎながらそう叫んでくる。  その勢いに押されるがまま、僕は投げ渡された五角形の金属物体、「ダイショウギチェンジャー」を掴み、憑かれたかのように、天高く掲げるのであった。  胡散臭いと、思わなかったわけではない。  ちょっと春の風にやられちゃったアブない老人の世迷言との疑いが、晴れたわけでもない。  だが、日々の生活に、これからの人生に、途方も無い閉塞感を感じていたのは事実だ。  それに、僕の体を褒めてくれた人なんて、初めてだったから。  だから、だから。 「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」  口から飛び出たのは、もう何年も出していなかった、腹からの雄叫びだった。腹筋から、体の隅々までに力が漲り伝わっていくのを、確かに感じた。 「『ダイショウギチェンジ』っ!!」  すべてを、覆せるのならば。 「……『ヴェルメリオ・リーオー』っ!!」  瞬間、僕の体は赤い光に包まれる。体の表面全体に、何かが張り付いていくような感覚……そして、 「……喰らうぜっ、盤上些末の、全・方・位!!」  キメ台詞まで叫んでしまった僕は、自分の体が赤いライダースーツのような全身タイツのようなもので覆われていることを実感する。  白い、肘下まであるグローブ。同色の膝下まであるブーツ。それらを黒いゴーグル越しに見ている。  「変身」……まさに変身。その作用機構は全くもって分からないものの。  何というか、想像から1ミリもずれていないその出で立ちに、僕は感動よりも先に、押し寄せてきている困惑を、上手に咀嚼しきれないままでいる。
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