△5四竪兵(しゅへい)

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「喰らうぜぁっ!! 盤面些末のっ!! 全! 方! 位!」  自分でもどうにかなってしまったんじゃなかろうか的マックスハイテンションで、「獅子」に騎乗した僕は、両腕を滅茶苦茶に振り回す。その無軌道な動きではあるものの、それゆえ読めない「攻撃」が、敵駒へとミリ秒単位で突き刺さっていき、有無を言わさず爆散させていく。  手のひと払いで、十体がとこ、薙ぎ払われる。自分の手の指一本いっぽんが、まるで獅子の牙と化したかのように。  僕の妄想じみた想像が、細かなディティールを伴って具体化した時、それが現実にも昇華されている。名前はややお間抜けなものの、凄まじい力だ、「オマジュネイション」。  他のみんなも、でたらめな突進力だったり、連射力だったり、獰猛力(?)だったりを存分に発揮して、周囲の駒たちを一体残らず仕留めていっている。それでも増殖は続いているのだろう、確実に場にいる数は減らしていってはいるものの、敵駒は次々と襲い掛かって来る。  だが、今までみっちりと群れていて見通せなかったが、「裂け目」……駒が湧いてくる根源が見て取れた。今なら。 「ぶっっっっ込むぞぉぉああああああああっ!!」  自分でも驚きの腹からの声に応えてくれるかのように、足元の「獅子」もひときわ大きな咆哮を上げると、その時空の「裂け目」目掛けて一直線に猛進を開始する。
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