▲5五横兵(おうへい)

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 右から、左から、さらに奥から。  湧き出してくる敵駒たちを、一息一刀両断×5くらいに裁いて、僕と「獅子」の疾走は止まらない。爆散する駒の破片も払いながら、息せき切って先を目指すことだけに集中している。 「金飛車……放て」  その上空。よく分からない凪いだテンションへと移行した波浪田(ハロダ)先輩は、金色に輝く一畳くらいの「飛車」に結跏趺坐したまま、四方八方に謎の金色のレーザーを撃ち放っており、 「アアアアアアアアアアッ!!」  ナヤさんは、もはや人間の叫び声とは思えない、超高音域の愉悦に彩られた嬌声を上げて、跨った「黄色の豹」と共に、群れ為す黒い五角形の頭部分を次々と噛み砕いていっており、 「4八銀……3三桂……3二香」  冷静に、現れる敵の座標を、そのすぐそばを滑空しているミロカさんの「鳳凰」に伝えている沖島(オキシマ)と、それを先読みして「羽」の一部をミサイル化させたミロカさんの絨毯砲撃が敵陣の一角を消し飛ばしていっており、 「『流山……鯨飲って馬謖斬る準備は出来ていた』」  既に技名なのか、酔っぱらいの戯言なのか分からないほどのパワーワードが、「鯨」の背中でその魅惑の双球を弾ませているフウカさんから発せられ、何かよく分からない力場が発現されるやいなや、場の敵駒が一斉に吹っ飛んだりしていた。  そんな混沌。かつてない混沌だが、それだけに相手方は対応しきれていないようだ。黒い群れのそこここに、隙間が生じているように見える。 「……!! ……!!」  先ほどまでのジリ貧気味もどこへやら、押せ押せなムードが僕ら側に舞い降りて来ていた。いける……っ!! いや、いってやる!!
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