▲5五横兵(おうへい)

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 奥へ……っ!! 奥へ……っ!!  正面一点に対象を絞って喰らい屠り、それを一直線の推進力に代えて最奥を目指していく。トンネルのように狭まってきた空間の先に、これまでここの空間では見かけなかったような、眩い青白い光が瞬いていた。何だ? 「!?」  いきなり、眼前の敵駒の群れが左右に割れる。本能的に何かやばい空気を感じた僕は、跨った「獅子」にも意を即座に伝え、急制動でその場に踏みとどまる。 「……」  一瞬の静寂。その後で、駒たちの群れの中から音も無くこちらに進み出てきた人影、いや、青白い光を全方位に向けて放っている「人間」然とした姿が、宙を浮いて滑るように現れ出て来た。いや、本当に人間なのか? 「……ええ!?」  驚愕の声は、他ならぬ空駆けていた「鳳凰」……ミロカさんの口から放たれたのだけれど。いや、驚くよね。「二次元人」じゃなくて「人間」なんて……それも捉われていたとかの雰囲気はまるで無くて、いたって自然体でその場に浮遊してるなんてね…… 「なん……でだ?」  しかし波浪田先輩の、普段は出さないような真面目に困惑している声とかも聞くと、事態ののっぴきならなさは僕の想定以上のことなんじゃないかと、少し不安になってくる。 「……」  僕の左隣まで、何かに憑かれるようにしてにじり出てきた沖島に至っては、頭を覆うマスクだけいつの間にか外していたが、目・口をこれでもかと開いて、言葉を発することも出来ていない。  いったい、何がここまで皆を驚愕させる?  僕は改めて、正面で不敵な笑みを見せる「人間」に向き合う。
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