△5八副将(ふくしょう)

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「……!! ……!!」  しかしその形容通りに、巨大な駒たちは、先頭の奴の「後頭部」がその背後のにぶち当たったのを皮切りに、連鎖状に次々とドタンバタンとなぎ倒されていく。 ……道は開けた。  再び現れた先女郷の羽織袴姿にロックオンしたまま、僕は再び「獅子」を走らせる。目標は目前。射程距離に……入った!! 「ふ」  しかし、だった。目指すその優男は全くの余裕の笑みを見せながら、芝居がかった仕草で両手を広げて見せると、次の瞬間、何の力か分からないものの、空中へと静かに上昇していく。 「……本気を出すと言った……それには、こんな狭い空間ではとても足りない。君らの『世界』で……存分にやらせてもらう」  沈着な感じだが、何故かこちらを圧倒、戦慄させてくる声で、先女郷の上昇疾駆は止まらない。その頭上の宇宙のように遥か広がって見える空間に、ぴしりと、僕らがここに入ってきたもののような「亀裂」が走る。と同時に、開く傷口のように、それはぱっくりと広がった。その向こうには、「ここ」の宇宙空間然とした暗黒と対照的な、抜ける青い空が見て取れる。 「……また、『私たちの世界』の方に出るみたいだよっ!!」  ショッキング=ピンク盲虎:沖島(オキシマ)は、余裕からなのか揺るぎない信条からなのか例のキンキン声で注意喚起してくるが、やはりこいつらは「こっち」の世界への干渉を、露骨に始めて来ようとしているようだ。
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