▲5九四天王(してんのう)

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 現れた「亀裂」を難なく通過した、先女郷(サキオナゴウ)の飛翔は止まらないようだ。 「奴は……奴の目的は……?」  横からはミロカさんの絞り出すような声。ようやく奴を「敵」と認識してくれたようだ。だが、その声は冴えない。それでも自らの「乗機」―鳳凰を軽やかに駆ると、意を決したかのように、上空の「亀裂」向けて速度を上げて上昇する。 「言うてたやん、『日本侵略』て。ま、させへんけ↑どぉ↓」  グリーン反車(へんしゃ)、フウカさんはいつも通りの、いい感じに力抜けた調子でそう言いつつも、動きはかなりの急制動で、跨った「鯨」共々、宙を力強く(双球を弾ませつつ)推進していった。  彼女らの後を追い、残った僕らも各々跳躍をかまし、亀裂より「外」へ飛び出していく。 「……!!」  明るさに目が慣れるのに数秒、現れたのはやはり、入って来た時と同じ、昼日中の新宿駅南口周辺の光景だったわけで。  既に一般の方々の避難は始まっててくれたようだ。制服の警官たちが、手に手にスマホを掲げている人たちを、押しやるようにしてこの場から遠ざけようとしてくれているのが眼下に望めた。そう、眼下。  僕らはと言えば、いつの間にか、宙に浮いていることが出来るようになっている。自然と「出来る」と考えれば、何でも出来てしまいそうな、そんな謎の万能感の中に僕らはいるみたいだ。 「オマジュネイション」……何をオマージュしているかは定かではないが、とにかく、この奇想天外な力を……使わない手は無いし、使わなくては到底覚束ない相手でもありそうだ。ならば、存分にそれを解放するまで……っ!!
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