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身体に感じる圧迫感と重量はかなりのものだ。それでも、それを差し引いても、
(カッコいい……)
のだった。赤を基調に、ボディには黒いメタルな質感の防弾チョッキのようなプロテクターが、きちりと体に嵌まり、手先足先は光沢のある白グローブで締めている。色づかいが素晴らしい。
「……やはり、選ばれし者。その『スーツ』の重量は約20kg。それなりに鍛錬をした人間でないと、身に着けて動くことは困難。さらに戦うとなれば尚更。潰れないだけでも大したものだ」
老人は相好を崩してそう言ってくるが、いや、誂えたかのように体にフィットしてくるので、そこまでの重さは感じない。むしろ体の稼働を先回りしてサポートしてくれるかのような感覚だ。僕は腕をぐるり回したり、膝をよいしょと曲げてみたりする。
緑映える公園では、赤い姿がよく目立つだろう。周りを見渡すと、僕と老人以外の人影が無いことが黒いバイザー越しにも確認できた。まあこの不審者たちに近寄ってくるとしたら、制服組しかいないよね……
ふと我に返れば、ここに至るまでの僕らの怪言動・怪行動は逐一チェックされているのでは。通告来ますよ?
「……要らん心配だ。その程度、欺くことは我々の科学力にとっては容易い。それよりもどうだね少年、我々と共に戦ってはくれんかね」
「科学力」という言葉を臆面も無く使うことに一抹の不安を感じるが、まあこのスーツにしても、どこからどうやって出てきたかは全くの謎なわけで、そこはいいか。それよりも。
「……」
やはり、僕なんかには、世界を救うやら、そんな大それたこと、出来やしないのではないか、というような、今までの負け犬人生がフラッシュバックして来てしまい、急激に息がしにくく感じられてくる。
―やっぱり僕はダメだ。
力無く、「武装」された腕を降ろす。外見だけ「変身」したって、ダメなものはダメなんじゃあないだろうか。僕は。僕には。
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