▲6四右将(うしょう)

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<フフ、実に面白イね、キミたちは。だガ、蚊トンボがせいゼい子ネズミになったとこロで、大勢は変わらンよ>  先女郷(サキオナゴウ)、いや、もうその姿は「怪物」の黒い「鱗」のようなものに覆われて見えなくなっていた。しかしその巨大な体の奥底から発せられてくるような、腹にどしんと響くような声は健在で、さらに傲岸不遜さもにじませながら僕らを嘲笑ってくる。  確かに彼我の体格差はまだまだ途方もないくらいで、奴が形容していたように、ネズミとゾウくらいはありそうだ。空を埋め尽くさんばかりに横方向にも広がっていく黒い雲のような「怪物」。もはや何の形も成しておらず、ただのどろどろした塊のようにしか見えない。  ガタイの大きさが勝敗を決するわけではない。そいつは確かにそうだ。だが、でかいに越したことはない。バルクアップするのは何のためだ? 筋肉こそが力の源、筋肉があれば、何でも出来るッ、そう、そのはずだからだ……ッ!!  普段は99.99%がとこ眠りについている僕の大脳の中で、閃光のようなイメージが拡散していく。筋肉……筋肉。理想の筋肉、理想の身体。  そう、それこそが「力」の、正義の力の体現と、僕は定義するッ!!  いい感じにキマってきた全中枢器官をフル稼働させ、僕はより雄々しく、より猛々しい「姿」をイマジネイトしていく。
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