△6五左将(さしょう)

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「おおおおおっ、フロントダブルバイセップスッ!!」  両腕を天高く掲げ上げ、上腕二頭筋を誇示するポーズを脳内にイメージした瞬間、僕らの駆る「六棋合体ロボ:ダイ×ショウギ×オー」も、それに従い、かなりの高さになった空中に浮かびながら、その巨体をみしりと軋ませる。 「……何故ッ!! 勝手に動く……ッ!?」  困惑が声に出てしまっているミロカさんの声が、斜め後ろから響いて来る。合体した流れなのかそれもお約束なのか、各々の操縦席がロボ体内のどこをどう通ったのかは不明だが、六人を乗せたシートはジェットコースターばりの絶叫速度で驀進し、胴体部中央に集結していた。  五角形のそれぞれの頂点に5人。そしてその中央には自らが中心、みたいな感じで悦に入っている波浪田(ハロダ)先輩が鎮座している。まあそこはどうでもいいんだが。 「サイドチェストっ!! アブドミナルアンドサイっ!!」  次々とポーズをキメていくロボ。その度にボディは謎の光を発し続け、内部に意味不明の「力」が沸き起こるイメージががんがん来ている。僕の「オマジュネイション」に共鳴してくれている……っ、このまま力をため込むことが出来れば、奴……先女郷(サキオナゴウ)へ対抗しうる力を得られるはず!! 「と金、お前か」  そこまでだった。ミロカさんこと「スカーレット鳳凰」のスーツに包まれたすらり長い脚が伸び、ヒール状の踵部が、僕のマスクの後頭部を貫かんばかりに押し込まれてきたわけで。エヒィッ!!  その鋭利な切っ先は、あやうく中枢に達してしまいそうなところで何とか留まるが、その恐怖感に支配されつつある僕の大脳は、イマジネイションを止めてしまっている。  せっかく「力」を増幅していたのに……っとの切なる想いは無視され、イニシアチブは完全にミロカさんに奪われてしまったわけで、巨大ロボは一転して軽やかな体裁きで目指す相手に向かっていく。
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