△6五左将(さしょう)

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 しかし相手は既に「黒雲」形態だ。どこを狙ったらいいのか、全くもって分からないはず。しかしミロカさんはピンクの虎が変形した「右手」に力を集めるかような動作をするや、その掌に鋭利なやり投げの「槍」のような、光る「武器」を顕現させる。「武装化鋼」……と言っていた「相手駒を武装へと変化させる技」を、いま、触媒なしで自在に操っている……っ。これもまた、「オマジュネイション」の為せるわざ、なのだろうか。  思い切り後ろに振りかぶってから、黒雲の中心部あたりに渾身のフォームで射出投擲するミロカさん主導のロボ。 「……っぜえっっ、らあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  摩訶不思議な投擲発声と共に、「光の槍」は暗闇に一瞬飲み込まれたかに見えた次の瞬間、その強烈な回転が、周りに立ち込めていた「黒雲」を霧散蒸散させていく。  すさまじいね。こういう手段もあるんだねーと、バルクアップ一辺倒で作戦を組み立てていた僕の崇高なオペレーションが、呆気なく瓦解していくことを自認する。 <……>  青く澄み渡った空の中央に現れたのは、先女郷が変貌した「化物」の姿だった。黒・銀・金の五角形の駒を色とりどりに鱗のように纏ったその体躯はしかし、僕らのロボの三倍くらいの大きさでしかなかった。何だ。この程度か。僕にまた天啓のような「オマジュネイション」が舞い降りてくるのを感じている。
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