▲7一夜叉(やしゃ)

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 垂直落下式に、僕なりのアレンジを加えた高角度の技が見事に決まった。マットにうずくまり、頭を押さえる先女郷。と、 <ああーっとぉっ!! 戦隊ロボ然とした方の、オリジンに近いブレンバスターがッ!! 黒い怪物の巨体を捉え、完! 全! にっ!! 頭頂部をマットに突き刺すが如くっ!! パーフェクトに決まったぞぉぉぉぉぉぉっ!!>  そこに大音声で響き渡ったのは、いやに滑舌の良い、男の実況の声だった。中空に浮いた「リング」の周りを見やると、何台かのヘリコプターが、こちらにかなり肉薄して旋回しているのが音でも分かる。  危険を物ともせず、いや逆に危険だからこそなのか、開け放たれたヘリのドアから身を乗り出して、前歯がやけに突き出している実況の男が、興奮した様子でヘッドセットに向けてしゃべりまくっている。  あぶねーなーと思いつつも、やはりレスラーも盛り上げるのは実況なのかもしれない……と、立ち上がり構えてからも、しばしの余韻を持ってみせたりする僕。 「はやく決めろ」  アヒィィっ!! ……いま頸動脈を貫きそうなほどに、長く鋭利なヒールが僕のうなじから差し込まれそうになったよ。伸びた!? そして極限までの鋭利化をした!? これも……「オマジュネイション」の……力……なのか……ッ!?  詮無い自問をしている場合じゃない。ミロカさんは先ほどからこの展開をこころよく思ってはいないから。  迅速なとどめ、それを的確に遂行しないと、逆に僕にとどめが刺されてしまう……っ!!
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