△7二鳩槃(きゅうはん)

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「!!」  僕の視界の中心で何か「黒いもの」が爆ぜる。そして僕の体の左側で感じる衝撃。 「ぐっ……!! あ……」  一拍遅れて、激痛がやって来る。先女郷の……これは触手。直接……僕を狙ってきやがっ……た。  先ほどのミロカさんの鋭利なピンヒールのように、その「触手」の先端は研ぎ澄まされており、それはあっさりと無遠慮に、僕の左肩の辺りを貫いていたわけで。  そうだった。これはルールに則ったスポーツじゃあないんだ……浮かれて、ひとりよがりなショーを演じて……どうする。 「と金っ!!」  右後ろからは、ミロカさんの張りつめた声。しくじった。バカだ僕は…… 「!!……伏せて」  さらに右方向から、沖島(オキシマ)の押し殺していながらも鋭い声が飛んだ。次々と別の黒い触手たちがロボの外殻を難なく貫いてくると、このコクピット、6人が一同に介した操縦機関を的確に蹂躙し始める。何本もの黒い槍のようなものが……撃ち込まれて、黒色で空間が埋め尽くされそうだ。  呼吸するとそれに合わせて痛い……痛みは治まる気配は無く、温かいものが、全身スーツの左肩付近で広がっていっているのが分かる。そんな、ぼんやりとした思考しか出来ないままの僕に、浴びせられる懐かしいツン声。 「伏せろって言ってんでしょぉぉぉぉっ!!」  満足に動かせない体を、上から無理やり押し込まれていく。「スカーレット鳳凰」が、その両翼で僕をかばい守りながら、触手に当たらないように、体勢を低く低く押さえつけてくれているんだ……ありが……とう、ミロカさん。  仰向けになったまま、ミロカさんの方を向いた。その時だった。 「……!!」  その紅いフルフェイスマスクの右こめかみ辺りを、「黒触手」の一本が跳ね飛ばすかのように通過していく。激しい衝撃に亀裂を走らせながらそのマスクは主の元から弾け飛んでいくと、 「……」  その下に隠されていた、美しい少女の顔を露わにさせる。しかしその表情は抜け落ちていて、その白い頬を伝って、やけに鮮やかな赤が伝ってくるのも見えた。  力を失い、僕に被さるようにして迫ってくるミロカさんの血の気が失われた顔は、これまででいちばん現実感が無かったわけであり。 「……え?」  僕はそんな間抜けなひと声を上げることしか出来ないわけであって。
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