▲7三天狗(てんぐ)

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「モリくん……」  床に伏せたままの沖島(オキシマ)が、無防備に体を起こした僕の姿を認めて何か言おうと顔を持ち上げる。大丈夫。大丈夫だ。もう誰ひとり、傷つかせない。  「触手」は活発に、そしてどこか楽しむかのように獲物を手探りで捕まえようとするような、そんな動きに変わってきているが。ふざけんな。  ……「獅子」を舐めるんじゃあねえ。 「!!」  「居食い」の能力は、こんな狭い空間でこそ、存分に真価を発揮する。瞬間、見えない「牙」が僕の体の周りを乱れ飛び、「触手」を一本も残さず、千切りレベルにまで切断していた。  くそっ……!! 最初からこうしていれば……左肩くらい貫かれたくらいでひるんで後手を引かなければ……僕はマスクの下で裂けろとばかりに下唇を噛み締める。  静寂が、この場を支配していた。波浪田(ハロダ)先輩でさえ、僕にかける言葉は見つけられないようだ。沈黙がのしかかって来る。  でも、もういい。いいんだ。  ミロカさんの身じろぎもしなくなった身体を静かに、丁寧に横たえると、決然と僕は再び立ち上がり、正面で相変わらず芸も無く立ち尽くす先女郷(サキオナゴウ)の姿とスクリーン越しに向き合う。自慢の触手が一瞬で同時に刻み消されたことに泡食ってでもいるのか? 「俺が……決着をつける。みんなは……ミロカさんを頼む」  まるで自分の声ではないような音声が、確かに己の声帯を震わせていることに少し驚きを感じつつも、自分の……為すべきことを、整理しようと、僕はほんの一瞬、コクピットの中で立ち尽くしてしまうのだが。  やるべきことは、ひとつしか無いんじゃあないか?  ……先女郷を、奴を俺が……俺が倒す……っ!!
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