▲7五近王(きんのう)

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 リンゴの皮むきのように、大根のかつら剥きのように、熟練のカンナ捌きのように。  先女郷(サキオナゴウ)の触手は、僕の差し出した左掌を境に、ちりぢりに分かたれ、その動きもついに止まった。 <グッ……>  苛立ち混じりの声が、地の底を這うかのように聞こえてくるが、  ……もういい。  自らの体自体をその「触手」につぎ込んだのか? 先女郷の身体はさらに縮んでいた。その首根っこを、「獅子の左手」で掴み上げる。  力を使い果たしたのか、観念したのか、されるがままの先女郷。あっさりと、決着はついたような感じだった。  だが、  ……これで終わらせる気はさらさらない。二次元人、お前らの存在意義すらもかき消して、完全にこの地球から排除してやる。  言葉にしてみるとそんな陳腐な感情に、それでも僕は押され続けられていたかった。ふとした瞬間に、襲い掛かって来る感情があったから。 「モリくん? どこに……」  コクピットの中、スライド式のドアから出ていこうとする僕の背中に、沖島(オキシマ)からそう声がかかったわけだが。振り向かずに僕は言う。振り向けなかった。ミロカさんの姿をもう見ることが出来なかった。
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