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リンゴの皮むきのように、大根のかつら剥きのように、熟練のカンナ捌きのように。
先女郷の触手は、僕の差し出した左掌を境に、ちりぢりに分かたれ、その動きもついに止まった。
<グッ……>
苛立ち混じりの声が、地の底を這うかのように聞こえてくるが、
……もういい。
自らの体自体をその「触手」につぎ込んだのか? 先女郷の身体はさらに縮んでいた。その首根っこを、「獅子の左手」で掴み上げる。
力を使い果たしたのか、観念したのか、されるがままの先女郷。あっさりと、決着はついたような感じだった。
だが、
……これで終わらせる気はさらさらない。二次元人、お前らの存在意義すらもかき消して、完全にこの地球から排除してやる。
言葉にしてみるとそんな陳腐な感情に、それでも僕は押され続けられていたかった。ふとした瞬間に、襲い掛かって来る感情があったから。
「モリくん? どこに……」
コクピットの中、スライド式のドアから出ていこうとする僕の背中に、沖島からそう声がかかったわけだが。振り向かずに僕は言う。振り向けなかった。ミロカさんの姿をもう見ることが出来なかった。
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