▲7五近王(きんのう)

3/3
前へ
/222ページ
次へ
「……決着をつけてくる。奴と……」  余分な力と共に、感情までも抜け落ちたような僕の声に、それ以上は何もかける言葉が見つからなかったのか、沈黙が狭い空間に満たされていった。  それに構わず、コクピットから出た僕を待っていたのは、球体のゴンドラらしきものだったわけで。これもおそらく僕のオマジュネイションが作り出したものだ。これに乗れば、この「ロボ」の内部を自在に移動できる。そう、僕が決めた。決めたからには、その通りになるんだ。僕は無言でその「球体」に乗り込む。 「……」  行先も、もはや分かっているんだろう、伝わっているんだろう。「球体」は左腕の先を目指し、音も無く移動し始めた。  ロボの胸部にある操縦席から、時間にして一分もかかってはいなかっただろう。その間はわざと呼吸を止めて、その苦しさに意識を逸らしてたりしていた。何やってんだよ、と自分につっこみを入れながら。  内部空間はそれっぽい機械で埋め尽くされていたものの、それらの隙間を縫うようにして、スムースに「球体」は推進していく。そして、  終点は急に訪れた。  左掌が接している「怪物」の首の部分。「球体」は静かに止まる。そこにはいつの間にか、いま通ってきた「通路」から直結するような「トンネル」然とした穴が開いていた。  いや、僕がイメージし、僕が開けた。「球体」から降り、先を目指す。  ぱっくり抉られた「怪物」の喉元の先には、少し開けた空間があって、その中央に、驚愕を無理やり抑え込もうとしている、先女郷の姿があった。下半身を「怪物」に埋め込ませて。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加