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<そうだな……追い込んでいるつもりだろうが、貴様らを相手にせずとも、我々はこの世界を屠ることが可能だ。守るべきものが無くなった荒廃の惑星で、お前らを相手に千日手を続けても、我々は一向に構わん>
クック、と歪んだ笑みを貼り付かせたまま、目の前の男はそうのたまうが。
で、あれば、やることは自ずと決まってくる。
「千日手は避けたいが……『対局』で決着をつけるっていうのは面白い。最後は『将棋』で白黒をつけたい」
僕はそう言うと、先女郷のすぐ前に、どかりとあぐらをかいた。ぴくりと先女郷の眼鏡の奥の細い眉が動く。
<……何を世迷言を?>
こちらを小馬鹿にする姿勢も、もううんざりだよ。
「……将棋やろうぜ」
僕もわざとらしい笑みを貼り付けたまま、つ、と少し上らへんに顔を上げると、虚空に「将棋盤」を現出させた。何もない空間から現れたその7寸はあろう脚付きの立派な盤は、次の瞬間、支えを失ったかのように、重力に任せて僕ら二人の中間にどすりと落ちてくる。
本榧、天地柾。最後くらいはこんな豪華な盤で指すのもいいだろう?
沈黙でこちらを睨みつけてくるだけの先女郷との間にある盤上に、さらに僕は「駒」をも、少し上空から、パラパラと耳に心地よい音を鳴らせながら現出させていく。
盤に着地した「駒」たちは踊るようにくるりと回転したり、氷の上を滑るかのようにして、「定位置」へと自然に収まっていった。
四十枚の駒が、整然と並ぶ。
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