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「将棋……将棋だと? 残念だがもう遊んでいる暇は無い。キミの面はほとほと見飽きたよ。私はキミらの世界を破壊して眠りにつく。最早もう……疲れたのだよ、すべてに」
先女郷の顔は、今まで見たことがなかったような、諦観と疲労のようなものに包まれているが、お前の都合など、知らん。
「……この対局に、お互いの『存在』を賭けようぜ」
だが、譲歩してやる。ボクらが目障りなんだろう? 「対局」で全てを決着させれば、手間は省けるはずだ。
僕はじっと、先女郷との間に現出させた「盤駒」を見ている。そうだ、この小さな9×9の枡目が、僕とお前の最後の一騎打ちの場だ。
「……どういう意味で言ってるかは分からんが」
「『対局』に勝った者が負けた方を屠る。それだけだ」
先女郷の言葉を遮り、僕はそう告げてやる。純粋な「戦闘」であれば、僕らがこいつを倒すこと、それはもう容易であろうと思われる。
だが、それじゃあ駄目だ。こいつの「肉体」のような物が滅びようとも、怨嗟を凝結させたようなこいつの「意思」は、必ずこの地球に残る。そのことを僕は知っている。いや、判っている、と言った方がいいのかも知れない。
「オマジュネイション」と僕が勝手に名付けたその「力」は、いまやかなりの奔放さを持って「万能」を僕に問いかけてくる。
それが僕に告げて来ている。こいつは、真の内部から破壊しなければならないと。
……ではどうする? 答えはやはり「将棋」だった。
将棋から生まれし存在は、将棋にて葬る。
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